Butterflies
Butterflies / BUMP OF CHICKEN
BUMPのアルバムは旧作から順番に取り上げていくつもりだったけど、今回は新作なのでちょっと例外的に記事にしようと思う。
彼らの8枚目のオリジナルアルバム。前作「RAY」から1年11ヶ月という早いペースでリリースされたせいか、作品全体のまとまりがいつもより強く感じられる1枚になっている気がする。
ごくごく個人的な感想を言わせてもらうと、最初にこのアルバムを聴いた時に思い浮かべたのは、小さな時に大切にしていた宝箱だった。
素敵な絵が描いてあるお菓子の缶。その中に母の鏡台からくすねてきた脱脂綿を敷き詰めて、どこかで拾った美しい縞模様の石だとか、砂の中から見つけた角の取れて艶のなくなった、でも太陽に透かしてみるときれいな色に光るガラスのかけらだとか、ほんのり桜色に光る貝殻だとか、お祭りの日に夜店で買ってもらった指輪から取れてしまった石(のつもりのプラスチック)だとか、そんなものたちを大切に並べていた。たぶん他の人から見たらガラクタばかりだけど、自分にとってはひとつひとつが大切な宝物だった。この缶がどうなったのか、入っていたものはどこに行ったのか、もう全く記憶にないけれど、あの蓋を開けた時のときめきは今でも鮮やかに思い出せる。
このアルバムには何故か、それに似た胸の高鳴りを感じてしまう。みんなに見せびらかすのではなく、自分ひとりでこっそり蓋を開けて楽しみたいような、そんな性格の曲たちなのかもしれない。
リリースに先行して発表されたリード曲の「Butterfly」
あまりにもあっけらかんとEDMな仕上がりになっていて、BUMPらしくないとか否定的な意見もたくさん見かけたけど、今までに着たことのない服を着てるだけで、中身はこれ以上ないくらいにBUMPらしい曲になってると思う。
これと、1曲めの「GO」、配信リリースSGだった「パレード」あたりがちょっとエレクトリックな音作りになってるけど、それは「RAY」における「虹を待つ人」「ray」と同じような感じで、実際にアルバム全体を聴いてみれば、いつものようなバンドサウンドの曲の方がむしろ多い事に気が付く。
そしていつにも増して、このアルバムの曲の歌詞で藤原基央は弱音を吐いている気がする。怯えて、しょっちゅう涙を流して、でも自分の鼓動を確かめながら必死に立っている、そんな印象を受ける。
だけど弱さを認めたことから生まれる強さでもって、却って今までにないほど力強く前に進み、高く羽ばたいているように思えるのだ。
曲のアレンジが多様になればなるほど、彼の言葉の純度は高くなり、歌の力は大きくなっていく。いやむしろ曲が強くなっているからこそ、どんなアレンジを施されても、まぎれもないBUMPの曲として確かに存在出来ているのだろう。
私の幼い時の思い出の宝箱の中身はガラクタばかりだったけど、このアルバムに並んだ曲は、どれもが本物の宝石たちだ。ブリリアントカットに磨き上げられてキラキラ光ってる石もあれば、原石の風合いを残したままそっと磨かれているものもある。だけどどれもが本物の光を静かに放っている。そしてそれらはこれからまだ磨かれていくかもしれないのである。ライブという、魔法の空間の中で。
これほどの完成度のアルバムをさらっと出せてしまう今のこのバンドの充実ぶりにちょっと戦慄を覚えつつ、その素晴らしい時間をしっかり見守り続けていられることの幸せを噛みしめている。
間違いなく(ちょっと気が早すぎるけど)今年を代表する作品の1枚になるだろう、私の中で。
そして全く表に出てこない部分の、例のアレ。つまり、11曲入りのアルバムの12曲め。
これがもうビックリするほどの完成度で、ここにもノリにノッている彼らの今、が見事に閉じ込められていると思う(笑)
「金魚が一度でも君を責めたことがあったかい」 …今回ここにBUMPの隠し曲のなんたるかが集約されてしまったと言っても過言ではない気がする(笑)
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