THE LIVING DEAD

THE LIVING DEAD / BUMP OF CHICKEN (2000)


BUMPインディーズ時代の2ndアルバム。先に曲だけがある状態でスタジオに入り、1週間ほどの短い期間でほとんどの歌詞を書いて仕上げたというわりには、恐ろしいほどの完成度を見せている作品。最初と最後に語り部が登場して、彼が持ってきたいくつかの物語、として展開する体で作られているせいか、1曲1曲の物語性が最も高いアルバムになってると思う。ちなみにこの語り部はジャケットの人で、かの「あんたに笑顔を持ってきた」って居座るラフメイカーさんと同一人物らしい。


当時のインタビュー(※)によれば、「Ever lasting lie」などは、自分の中に「石油掘る男」とかがいてその自動書記のような感じで、一気に書き上げたんだとか。この曲や「K」など、何人も人が死ぬので、チャマは聴かされた時「なんで殺すんだ」って怒ったり泣いたりしていたとのこと…いかにも彼らしい(笑) 

この時のインタビューで藤原基央は自ら何度も「天才詩人の俺が」って、今からは考えられないような俺様発言をしてるんだけど、いや実際、本当に天才なんだから文句のつけようがないなって、これを読み返すたびに思ってしまう。


BUMPをなんとなく聴き始めた最初の頃は、ただただ、このバンドの音が好きで、声や歌詞の魅力にじわじわ参っていく段階は、私の場合、ちょっと遅れてやってきた。だからこのアルバムのいろんな曲の物語のすごさに気が付いたのも、実はけっこう後になってからのことだった。ある時、ちゃんとじっくり聴いてみてやっと「K」の内容を知り、ものすごい衝撃を受けた。たった4分弱の曲の中にこれだけしっかりした物語が展開して、しかもあり得ない程みごとなオチまでついている。けなげなカギ尻尾の黒猫が一生懸命走っている姿を想像すると涙が止まらなくて、しばらくはあまり人のいるところで聴けなかったくらいだ。それから他の曲もじっくり聴いてみて、改めてそこに広がるいくつもの世界に驚いて、そこから他のアルバムの曲たちも歌詞をじっくり聴くようになったのだった。…それまで歌詞を聴かないでBUMPの何を聴いてたんだよって過去の自分を責めたくなるね、本当に。


ラフメイカーさんの語り部分になってる最初と最後の曲、「Opening」と「Ending」はのちに「プレゼント」という完全版が、カップリング作品集の「present from you」に収録されるけど、これもとんでもない名曲。もともとこの時点で1曲として存在していたのを、このアルバムの「Opening」と「Ending」として使うため、分割したものらしい。こんなにすごい曲をこんな風にさりげなく使っちゃってたところが、なんともBUMPっぽいなって個人的には思っている。


※ (ROCKIN'ON JAPAN 2000年4月号に掲載)

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