ユグドラシル

ユグドラシル / BUMP OF CHICKEN (2004)


ぼちぼち「今年を振り返る」的な感じで、今年聴いた音楽のあれこれを思い返すような時期になってきつつある。

今年、一番良く聴いたアルバムは何だろうって考えてみて、何枚か思い浮かんだ中の1枚がこれだった。前回BUMPのアルバムは「jupiter」を取り上げたので、順番的にもちょうどいいかなと思って、今日はこの作品について少し書くことにする。


彼らの4作目、意外にもタイトルがアルファベット表記ではない唯一のアルバム。このバンドの最高傑作にこれを挙げる人もよく見かける気がする。

私ももちろん大好きな作品だし、今までも数えきれないくらいの回数聴いていたことは間違いない。でも一番好きなアルバムという訳ではなかった。傑作なのはよくわかるけど、それは頭でわかっているだけで、心で感じていたわけじゃなかったんだと思う。


今年の夏、幸いにも行くことが出来た彼らのライブ。シングルリリースの記念ライブだったので、アルバムの縛りがない分、わりと自由なセットリストで構成されていて、なかなかレアな曲がたくさん聴けた。

10年以上前の作品であるこの「ユグドラシル」からも4曲やってくれたのだけど、それらがあまりにも素晴らしすぎた。中でも、初めて聴くことが出来た「乗車権」の文句なしのカッコよさ。そしてイントロの2音めで会場からどよめきが起こった「太陽」には、激しく心を揺さぶられて最初から涙が止まらなかった。いずれもCDでは感じることのできなかった「何か」、つまり生の彼らの音、生の藤くんの声にだけ感じられるあの「何か」でこれらの曲に触れてみて、初めてモノクロのこのジャケットの景色に色が着いたような気がした。

出会ってずいぶん経つのに、今になってなお、こんな感動を与えてくれることへの驚きと感謝を噛みしめつつ、残りの夏はこのアルバムを聴きながら毎日を過ごしたのだった。


この「sailing day」、それに「車輪の唄」「オンリーロンリーグローリー」「スノースマイル」あたりのシングル曲はある意味「ユグドラシル」を代表する部分かも知れないけど、実は「太陽」「同じドアをくぐれたら」「レム」なんかに、このアルバムの本質が表れている気がする。

「レム」は最初聴いた時、太宰治の「人間失格」を初めて読んだ時みたいに、自分のことを言われているようでなんか怖かった。こんな歌詞を優しいギターの音色で、そしてやっぱりどこか優しい声で歌ってしまう藤原基央に戦慄を覚えた。多分これからもずっと見透かされてしまうのだろう。私にとって、特に大切な曲のひとつだ。


「太陽」の最後の一行の「出れたら最後 もう戻れはしない」、「車輪の唄」の「何万歩より距離のある一歩」、そして言うまでもなく「ロストマン」の「ここが出発点 踏み出す足は いつだって始めの一歩」…他にもあるかも知れないけど、このアルバムには「覚悟を決めた旅立ち」を感じさせる歌が多い気がする。

その一歩は「THE LIVING DEAD」のジャケットのあのラフメイカーさんが道の先に向かって歩み出した一歩なのかも知れない。

…ほらね?(笑)


彼の旅はまだ続いていて、涙の落ちる音が聞こえるとすぐに駆けつけてきてくれる。

つまり、BUMPの曲ってラフメイカーさんなんだよね。

私は勝手にそう解釈している。

0コメント

  • 1000 / 1000